“伝える”を“伝わる”に変える翻訳

 

最近、中小企業の経営者を対象にIT活用の意義をお話したり、学生や社会人を対象に新聞記事から個別企業やビジネスの動向を解説したり、といったことが続きました。

 

このようなときに私が果たしている役割は、“翻訳”係です。

 

ITのような技術の話、外部環境と内部環境が入り混じる企業やビジネスの話、こうした話をエンジニアやある部分特定の専門家がすると、専門でない一般の方に伝わりにくいことがあります。

 

専門家は専門家であるがゆえに、使う言葉も話の内容もご専門の立場から抜けにくくなるからです。これでは話し手は伝えたつもりでも、聞き手にはなかなか伝わりません。

 

実際、IT系のセミナーでは、カタカナや専門用語が多く、話の内容は一定以上の「事前準備」ができている人でないとわかりにくいものが多いです。

 

聞き手は、話し手が冒頭で使った専門用語ひとつで「わからない」と思った瞬間にシャットダウン、耳を塞いでしまい、以降は関心を示さなくなってしまいます。

 

このような事態を避けるには、聞き手に合わせて“翻訳”することが大切と思います。

 

実はこうした"翻訳"係をV.C.時代によくやっていました。

 

V.C.時代は、ITやバイオなど技術開発型企業への投資を検討することがよくありました。

 

投資の意思決定をする経営陣に対して、相手先企業から教えてもらった“借り物”の技術用語・専門用語を振りかざし、血気盛んに「この会社に投資せよ」とプレゼンする若手社員も結構おりました。

 

経営陣は金融出身者が多く、技術に詳しい人ばかりではありませんでしたから、このようなプレゼンでは理解できません。専門用語を並べられた瞬間に思考停止?になってしまう方もいらっしゃいます。

 

若手社員のなかには、自分のプレゼンを理解できない経営陣をバカにするような人もありました。

 

ここでの問題は、経営陣が技術や専門用語を理解できないことではなく、経営陣が意思決定可能な形に情報が提供されていないことにあります。

 

もちろん、経営陣が技術や専門用語に精通しているに越したことはありませんが、経営者だって人間です。得意不得意があります。

 

それに、限られた時間で意思決定を迫られる経営者が、何でも事細かにすべて知っている必要はないですし、その時間的余裕もないでしょう。

 

人は何かを理解する上で、それぞれ独自の“型”を持っていることが多いです。

 

私は日頃の様子から経営陣それぞれが持つ理解の”型”を想像し、その”型”に当てはまるよう情報を加工・編集して提供するようにしていました。

 

”型”はその人が置かれてきた/いる状況・立場によっても変わるので、それらを踏まえて情報提供の仕方を変えていました。

 

専門用語は経営陣が理解可能な一般用語に置き換える・“翻訳”する、場合によっては必要な視点・判断軸なども提供し、経営陣が理解して主体的に意思決定可能な状態を作る、そんなことを長らくやっていました。

 

※ちなみに、ここでいう“翻訳”は、英語を直訳するのではなく、意訳するような感じです。

※“型”に合わせた提供の仕方は、ラジオに例えれば、相手が受信可能なところへこちらからチューニングして情報を届けるようなイメージです。

 

経営陣が納得して意思決定できるよう支援するとともに、若手社員にも意思決定に必要な情報の過不足を指摘して、若手社員と経営陣の間の情報・認識のギャップを埋める努力をしていました。

 

このような情報・認識のギャップはあちらこちらで見受けられます。

 

経営者と一般社員、開発部門と営業部門、IT企業(ベンダー)と中小企業経営者(ユーザー)、医師や弁護士・学者のような専門家と一般の人etc.

 

情報の受け手が必要な行動を起こせたとき、初めて、情報は伝えたのではなく、伝わったことになります。

 

情報が相手に”伝わる”ためには、相手の状況・理解の“型“に合わせた”翻訳“が必要になります。

 

社内に適切な”翻訳“係がいない場合は、お気軽にご相談くださいませ。