T&Iアソシエイツ代表の田中薫です。
第四次産業革命、デジタルトランスフォーメーション、破壊的イノベーション、ディスラプターなどなど、なかなか激しい言葉が飛び交うこの頃。
確かに今起きているのはとても大きな変化。主にITがもたらす変化のスピードは増していますし、その質も従来とは大きく異なります。
2年前、たまたま機会があって、日頃考えていることの整理として、「真のNo Borderはこれから」といった意味合いの文章をあるところで書きました。その一部を抜粋してみます。
「今後はデジタルとアナログ、ネットとリアル、ハードとソフト、製品とサービス、ロボットとヒト、といった対立概念で捉えることは難しくなる。両者の関係は融合したものになる。技術・業界の垣根は一層低くなり、学問・業種の分類も変わっていく。相互に乗り入れ、相互に侵食・関係しあう。企業はこれらへの変化対応力が問われている。競争相手が変わり、ゲームのルールが変わる。」
「競争環境(競争相手の数・質、競争の質・スピード)はこれまでとは比べ物にならない。今後は今まで以上にドラスティックな変化が起こる。事業の根幹を覆される事態、『本業喪失』といった状態に大手企業であっても追い込まれる可能性が高まる。」
No Borderのイメージ、なんとなく掴んで頂けたでしょうか?
一方で、冒頭のセンセーショナルな言葉などに翻弄されることなく、少なくとも傍目には淡々と我が道を行く経営者もいらっしゃいます。
こうした経営者が持っていらっしゃるのがブレずに「世に問う力」です。
この力、変革の時代に大切な意味を持っていると思います。
先日、ご縁があってインタビューさせて頂いた伊那食品工業の井上社長。
伊那食品工業は伊那市にある寒天のトップメーカーで、素晴らしい経営をしている企業として既に有名です。
同社の社是は「いい会社をつくりましょう~たくましく そして やさしく~」。
単に経営上の数字が良いだけではなく、会社を取り巻くすべての人々が日常会話の中で「いい会社だね」と言ってくださるような会社が同社の定義する「いい会社」です。
同社の企業目的を表す文章は、「企業は本来、会社を構成する人々の幸せの増大のためにあるべきです」から始まります。
経営を議論するとき、経営に関する本やコンサルタントの間でも、「あるべき姿」という言葉がよく使われます。
この「あるべき姿」、他者(株主やコンサルタントも含め)から決めつけられるものでも教えられるものでもないと私は思っています。
「あるべき姿」という言葉ではなく、私はあえて「ありたい姿」という言葉を使います。
「御社はどのような会社としてありたい(存在したい)ですか?」
「御社の『ありたい姿』とはどのようなものでしょうか?」
経営者が戸惑っていらしたら、「将来、どんな会社だったら良いと思われますか?」「どんな会社として見られたいですか?」
経営者が目先の問題で頭が一杯のご様子だったら、「仮に何の問題も制約もなかったらどうでしょう?どんな会社だったら、社長は嬉しいですか?社長の夢は何ですか?どんな人の、どんな役に立ちたいですか?」などなど。。。
対話の中でいろんな角度から問いかけ、現実から一旦離れて、イメージを膨らませて頂く。経営者の心の深いところにあるものを取り出して頂く。そのようなことを心がけています。
伊那食品工業は自社のあるべき姿を決め、「私たちが考える『いい会社』とはこんな会社です。いい会社にする/であるために私たちはこうします!」と宣言することで、世に問うているのだと思います。
外部環境は常に変化しています。
先行モデルもない、No Borderで変化の激しい時代だからこそ、変化に流されずブレずに「世に問う力」が益々求められていると思います。
「世に問う」ためには当然、その前に熟慮・熟考が求められます。ご自身(自社)だけでは気づけない、対話の相手が必要な場合が多いです。第三者の視点を持つ対話相手として、コンサルンタントの存在が求められることがあります。
自分たちがありたい姿、目指す姿を世に問い、信念と湧き出る情熱を持って取り組む、そうするなかで突破口を見出していく。このような経営者はいつの時代も存在します。
最後までお読みくださった読者の皆様、
皆さんの会社は何を世に問うていらっしゃるのでしょうか?
皆さんの会社の「ありたい姿」とはどのようなものでしょうか?
皆さんはそれが「腹落ち」して邁進できる状況にありますか?
※なお、上述のようにNo Borderが進むのに逆行して(No Borderが進むからこそ)、無意識/意識的にBorderが築かれる/築かれていくことがあります。それについては機会があればまた。。。