不安を行動に変えるには-高齢者医療における対話から

 

“あなたは○○という病気で、しかも治らない”と言われた高齢の男性。

 

今まで大きな病気の経験がないうえ、病院は“病気を治してくれるもの”と思い込んでいたためショックを隠せません。

 

すぐ死んでしまうわけではないが、ひょっとすると明日死んでしまうのかもしれない。

なのに、自分の病気を治してくれない医師。男性は納得ができません。

 

行われた検査、医師から言われたこと、それに対する不満を延々と繰り返し周囲に話します。

 

この男性にとっての問題は何でしょうか?

 

病気であること、病気が治らないことでしょうか?

 

病気であること、治療法がなく、医師が直せないことは、残念ながら変えられない現実です。

 

この男性にとって、病気が治らないことは不満であり、現実を知ったことで急に身近になった死への恐怖と不安があります。

 

誰もその不満や不安を解消することはできません。

 

しかし、男性の不満や不安、残念な気持ち、現状を受け止めながら、男性の今後を一緒に考えることはできます。

 

男性が今後の人生をできるだけ納得して過ごすにはどうしたらよいか?

 

お話を聞いた私は男性がほぼご自身が言いたいことを言い切った後に、少し質問をしてみました。

 

「一番心配なこと、不安なことは何ですか?」

 

しばらくのやり取りの後、男性は少し考えて「発作がいつ起こるのかわからないことが一番不安」と話しました。

 

そして次に病院に行ったときに、発作を誘発するものや発作が起きやすい状況、発作が起きた時の対処法を医師に聞いてくることになりました。

 

不安が払拭されたわけではありませんが、不満は減り、男性の表情は和らぎました。

 

通常、医師は手術の方法やリスク、成功確率、その後の生存期間、薬の種類やそれぞれの副作用など沢山教えてくれます。しかし、専門的で大量の情報を提供されたところで、高齢の患者は不安と混乱を増幅するだけです。

 

寄り添って丁寧に話を聴き、今とこれからを当事者と一緒に考える

 

本当はこうした姿勢で患者と向き合って頂きたいのですが、多忙ななかそこまでしてくれる医師は多くありません。

 

結局、患者は白衣の勢いに押されてよくわからないまま、不安と混乱を抱えたまま帰宅することになります。

 

突き詰めると、個人の病気も会社の経営も、いろんなことがわからないから不安になります。

 

そもそも、言語化されないものも含めて、人間は何かしら不満と不安を抱き続ける生き物です。

 

現実への不満と妄想によって広がり続ける不安。

自分を俯瞰して客観的に見ることは難しく、自分だけでは対処が困難なことも増えています。

 

それでも、老若男女問わず、多くの人は自分が納得できる環境下で、状況が整理され、判断基準や選択肢がわかれば意思決定と行動が可能です。

 

私がこの男性に行ったことはコンサルティングで行っていることとほぼ同じです。

コンサルティングでお話を伺うとき、私はカウンセリングで学んだ手法を一部使っています。

 

当事者の問題を整理し、課題に変え、行動に繋げる

そのために丁寧に話を聴き、一緒に考える

考える上で必要な質問を行い、当事者が自分の状況を理解するのを手伝う

 

その際、当事者が知らない専門的な情報や考え方、手法を提供し、当事者が主体的に意思決定できる状態を作っていく

 

解決できない問題を並べて嘆くところから、一歩進んで前を向いて行動できる状態を一緒に作っていく、そんなお手伝いを今後もいろんな形でしていきたいと思っています。

 

※なお、病気の症状・状態に応じて、ここで述べたようなアプローチ以上のものが必要であろうことを念のため書き添えます。