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新聞深読:中国ファーウェイのスマホから見る日中米韓~思考訓練

 

先日、日経新聞(2019/06/27朝刊、一面・八面)に中国ファーウェイのスマホを分解して論じる記事がありました。スマホを分解し、各部品を作っている各国(米国、日本、韓国、台湾)と中国との相互依存関係を示すことで、悪化する米中関係の影響を伝えようとするものでした。

 

記事の基になったデータを一部抜粋してみます。

 

あなたはこのデータをどのように受け止めますか?ここから何を読み取りますか?

データを自分事として捉えてみてください。

 

1.ファーウェイのスマホ「P30 Pro」を構成する部品の数と金額換算

構成する部品総数:1631

構成部品の金額換算:363.83ドル

 

2.部品提供企業が属する国の内訳(部品の数と割合、部品の金額換算と割合)

米国:15部品(0.9%)・59.36ドル(16.3%)、中国:80部品(4.9%)・138.61ドル(38.1%)、日本:869部品(53.2%)・83.71ドル(23.0%)、韓国:562部品(34.4%)・28ドル(7.7%)、台湾:83部品(5.0%)・28.85ドル(7.9%)

 

3.主要部品とそれを提供する国・企業、部品の金額換算(上位5つ)

①有機ELディスプレイ:中国・京東方科技集団(BOE)、84ドル、②DRAM:米国マイクロン・テクノロジー、40.96ドル、③アプリケーションプロセッサ:中国・海思半導体(ハイシリコン)、30ドル、④NAND型フラッシュメモリ:韓国・サムスン電子、28.16ドル、➄ボディパネル:台湾、20ドル

 

いかがでしょう?

データから何に気づきましたか?どう思いましたか?

 

ちなみに、データを踏まえて書かれた記事の一部はこんな感じでした。

 

A:ファーウェイのスマホは金額ベースで構成部品の5割程度を日米韓の企業に依存している

B:うち米企業の割合は16%で、カバーガラスなど高付加価値の部品が多い

 

上記の着眼点や内容についてどう思われますか?

記者はデータとABを踏まえて結局何が言いたかったと思いますか?

記事の内容に疑問が浮かんだ方のために、もうひとつ情報をご提供します。

 

4. DRAM(出荷額ベース)の世界シェア

①韓国・サムスン電子(42.7%)、②韓国・SKハイニックス(29.5%)、③米国・マイクロン・テクノロジー(23.1%)、④その他

 

いかがですか?あなたの気づいたことは記者と同じでしょうか?

あなたはこれらのデータから各国/各企業について、どんな状況/傾向/戦略を感じますか?

 

先程の記事の内容を見てみましょう。

Aは確かに記者の言う通り(金額ベースで日米韓は47%)ですが、Bはデータから言えば後半は少し違う気がしませんか?

 

確かに米企業の割合は16.3%(金額にして59.36ドル)です。しかし、その約7割(同40.96ドル)を米国マイクロン・テクノロジーのDRAMが占めています。カバーガラスは米国コーニングが有名ですが、その金額換算は2.7ドルとされていて金額から言えば高付加価値の部品とは言いにくいです。

 

さらに4で示したように、米国マイクロン・テクノロジーはDRAM市場で3位です。理屈から言えば、中国は韓国の上位メーカーにDRAMの発注を変えること(調達先の変更)も可能と言えます。

 

少ないデータですが、仮にこれらを基にした場合、米政府が中国への制裁として、ファーウェイに対する米国企業の部品供給を停止したら、誰に、どんな影響が出てくると思いますか?

 

また、中国は米国、日本、韓国、台湾といった関係国をどのように見ていると思いますか?

 

せっかくなので、記者とは着眼点を変えてみましょう。

例えば、記者が取り上げている金額ではなく、数量に着眼点を置いてみたら見え方はどう変わるでしょうか?

 

米国の割合は部品数では0.9%に過ぎません。むしろファーウェイが一番依存しているのは日本だとわかります。日本は部品数では過半を占めてトップです。金額ベースでは23%自国中国に次いで2番目です。これは裏を返せば、日本企業はファーウェイに安い部品を沢山納めていることになります。

 

単価が安いために日本企業の名前は3には出てきません。日本の最上位はソニーで6位(金額換算15.15ドル)。これを除けば日本企業は2ドル、3ドルの部品を多数納入しています。

 

このように着眼点を変えれば違った風景が見えてきます。

ファーウェイのスマホからは安価な部品を沢山供給している日本企業の姿が見えてきました。

 

部品数(企業数も)が他国より多いことを分散が効いていて良いとする見方もできますが、販売価格が安い以上はいかに安く作るかしか競争の余地がないとも言えます。

 

昔、SONYに代表されるように、日本企業は最終製品に自社の名前、ブランドを冠していました。それが今、スマホという最終製品ではアップル(米国)→ファーウェイ(中国)へ、高単価な部品でも韓国→中国へ、その組立においても台湾→中国→ASEAN諸国へと移って行き、日本の存在感はどんどん薄れました。

 

「高単価部品のプレイヤ」として残っているのはソニーのみ、それもカメラ関連のみです。

 

裏方化する日本企業

あなたなら、こうした状況をどう捉え、どう行動しますか?

 

今回はスマホでしたが、あなたの関わる製品、事業、市場ではいかがでしょう?

現在、どのような部品、製品、サービス、プレイヤがどのように関わり、構成されていますか?5年後はいかがでしょうか?

 

そんなことを考えるのにも、この記事はちょうどよい材料ではないかと思って取り上げました。ちなみに、この記事にはもっと多くの着眼点があります。ビジネスパーソンなら少なくとも5つ、できれば10個くらいの着眼点は持ちたいところです。

 

同じデータからもいろんな読み方、捉え方、考え方ができます。何をデータとし、データから何を読み取るのかAI任せにせず、自分の頭で考えたいですね。

 

新聞は面白い読み物で、とても手軽で手頃な思考訓練の材料にできます。しかし、残念ながらそのような読み方をする人は少ないです。How to本を沢山読むより、こういう記事を材料にしっかり自分で考える方が思考の訓練になると思います。

 

情報過多の現代、効率よい情報の集め方、使い方、情報の妥当性検証の仕方も、新聞を材料に学ぶことができます。新聞でも何でも情報が常に正しいとは限りません。一方的に情報を受け取るだけでは情報のカオスから抜け出すことはできません。情報には独自のスタンスをもって臨みたいところです。

 

企画や提案、事業創造などに関わるビジネスパーソン、学生の業界・企業研究にもこうした考え方は役立つと思います。思考トレーニングを求める方、社員にそうしたスキルを持って欲しい企業様など研修のご相談がございましたら、こちらからお問い合わせください。