· 

スタートアップ的創業に必要なものと邪魔なもの

 

T&Iアソシエイツの田中です。

 

スタートアップを志向する起業家のご相談に対応する中でときどき思うことがあります。

 

『想い』は必要だけれど、過度な『思い入れ』は邪魔になる

 

創業における『想い』はとても大切なものです。

特にスタートアップ的な創業を志向するとき、事業の立ち上げ、維持・拡大において『想い』は他者を惹きつけ、自身の心の支え、困難の中でも挑み続ける活動のエンジンにもなります。

 

一方で、過度な『思い入れ』は展開しようとしているビジネスや商品・サービスを他者にわかりづらくしてしまい、ユーザーの認知拡大につながらない、投資家からの資金調達が不芳になる、不要な開発を行い、売上が立たない中で限りある資金が消失していく、といったことになってしまいがちです。

 

スタートアップを志向するうえでは、時間は大変重要です。

過度な『思い入れ』による「遠回り」は、実現しようとしていたビジネス展開の遅れに繋がるだけでなく、そもそもの前提や想定の崩壊にも繋がりかねません。

 

このような起業家をご支援するなかではふたつのアプローチが考えられます。

 

一般的なアプローチは、いわゆる従来型のアドバイザーのような立場でご支援するものです。

事業性、収益性、スピードを念頭に、過度な『思い入れ』の不適切さを指摘し、排除し、妥当な戦略、ビジネス展開へと修正を促し、導く、ということになります。

平たく乱暴に言ってしまうと、「それではわからん!」「金にならん!」「スケールせん!」、だから「こうしたら良い」と第三者が言う、ということになります。

 

これは何か「上から目線」な感じに聞こえますよね?

ただ、過度な『思い入れ』は客観的視点の喪失によって起きてもいるので、第三者が相手を思って客観的視点で軌道修正を急がせるのは成功への道筋、時間短縮に有益でもあります。

その一方で過度な『思い入れ』の中に起業家が言語化できていない「大切な何か」が含有されていて、支援者がその存在とその軽重に気づいていない懸念は残ります。

 

もうひとつのアプローチはカウンセラーやコーチ、メンター的な立場でご支援するものです。

一般的なアプローチより大変ですが、私の場合は基本的には大変な方を選びます。

起業家と「共に考え、意思決定のプロセスを共有する伴走者」のような立場でご支援しています。

 

理由は、私が人の潜在力と自律性、主体性を信じているからです。

自分は「シェアード・ディシジョン・メイカー(協働的意思決定の支援者)」でありたいと考えています。

自分の想いを実現すべく、リスクをとった起業家にはご自身の人生・幸福のために、判断、意思決定を主体的に行って欲しいと思っています。

 

カオスに陥ってしまった起業家の脳内の整理をお手伝いし、起業家の『想い』はもちろん、過度な『思い入れ』を邪魔にせず価値にしたい、活用のシーンや場所、表現を考えながら、実現したい世界の言語化、それに向けた道筋、プロセスを共に描いていきたいのです。

 

一方でスタートアップ的創業は「時間との闘い」なので、ご本人が納得するまでの時間を短縮化することも求められます。「拘り」があり、過度な『思い入れ』があるとき、人間はそう簡単には他者の言葉に納得はしません。「自らの内から出てきた言葉」に納得します。

 

過度な『思い入れ』、「拘り」の背景は何か?本当に大切にしたいことは何か?それはどんな形でどのように実現できるか?起業家が実現したい世界観はどのようなものか?起業家が置かれている現況、背景、過去と未来を繋ぐ現在の位置づけ等々を考えながら対話を図り、適宜、必要な情報提供、具体的事例、手法、考え方、判断の基準となりそうな切り口といったものを提示しながら、主体的な意思決定をご支援しています。

 

人間は十人十色。

なかでもスタートアップ的な創業を志向する人は個性的です。

アーティスティックな創業者、挑戦者と共に、私自身も未来に向けていつまでも挑戦していきたいと思っています。

 

T&Iアソシエイツの活動理念

~見えないチカラを見えるカタチに~

 

 

※支援者向けの研修等でもお伝えしてきましたが、スタートアップや創業、起業といった言葉は無意識に使われていることが多く、支援者の間でも整理して使われていることは少ないです。

それぞれの言葉の違いを改めて考えてみてくださいね♪

 

T&Iアソシエイツの起業支援者としてのあり方(5つの視点)
カオスにあり、ジレンマにある起業家と共に考え、言語化、顕在化をご支援しています