T&Iアソシエイツ代表の田中薫です。
今年のゴールデンウイークは例年にない長い連休で、新入社員を始めとする若手の定着が気になるところです。
改めて厚生労働省の調査を確認してみます。
新規学卒就職者の就職後3年以内の離職は、大きく分けて3つの点で傾向がわかります。
ひとつには最終学位、入社時の年齢ともいえます。
3年以内の離職率は大卒で31.8%、高卒で39.3%、中卒で64.1%です。
早くに社会に出て働き出した人ほど離職率は高い傾向にあります。
早くに社会に出た人は家庭の事情で進学できなかった、学校に馴染めなかった、など何らかの事情で進学を止め、就職している可能性があり、そうした心理への配慮は必要でしょう。
2つ目に事業所の規模、大まかに言えば企業規模があります。
以下は事業所の規模別にみた大卒者の3年以内の離職率です(傾向は高卒者でも同じ)。
1,000人以上の事業所で24.2%、500~999人で29.6%、100~499人で31.9%、30~99人で39.0%、5~29人で49.3%、5人未満で57.0%が就職後3年以内に離職しています。
規模が小さい事業所ほど離職率が高いと言えます。
規模が小さい事業所では良くも悪くも、仕事の内容と人間関係において幅が広げにくい。自分に合わないと思ったとき、逃げ場を作りにくい状況と言えます。
一方、相対的には離職率が低めとはいえ、人手不足のなか高いコストをかけて採用した新入社員のうち、ほぼ4人に1人は大手でも3年以内に辞めていることになります。
辞めている人の質には要注意です。以前のブログでもご紹介したように、イノベーションを興してくれそうな人ほど大手企業に早く見切りをつける傾向が出てきているからです。
3つ目に業種です。
離職率の高さでは、宿泊業・飲食サービス業が49.7%でトップです。
次いで、教育・学習支援業46.2%、生活関連サービス業・娯楽業45.0%、医療・福祉37.8%、小売業37.7%となっています。
人手のかかるサービス業の離職率が高い状況にあります。
こうした若手の離職対策の方向性として、量と質の2つの面から考えます。
量的な面で言えば、仕事の量、仕事に従事する時間、仕事に対して支払われる給与などが挙げられます。
過剰労働で若手を追い込み、病気や怪我、自殺などに追い込んでしまっては企業の損失だけでなく、社会的な損失になります。仕事の量を適正化し、労働時間を見直すことは働き方改革関連法の施行と併せても取り組む必要があります。
給与など待遇面も同様です。小売・サービス業など他業種より給与が低めで、パート、アルバイトといったいわゆる非正規のスタッフに支えられてきた業界では、給与を上げる、働き方改革関連法で言う同一労働同一賃金といった待遇改善への対応は求められます。
量的な面での対応は比較的取り組みやすく、各社で比べ易いし、わかりやすいものです。
量的な面に対応したうえで、あるいは量的な面では他社より多少劣ってしまったとしても重要になるのが質的な面です。
会社で働く目的は生活費を稼ぐ、給料をもらうといった量的なものだけではありません。働き甲斐ややりがい、自分が関わる意義や意味。特に昨今の若者はこうしたものを求める傾向が強いです。
AIの進展などで今まで以上に将来に対する不安も増しています。ひとつところで留まっていて良いのかという意識が従来以上に高まりやすい状況でもあります。
それに対して、会社は以下のことができているでしょうか?
① 若者が将来に希望を持てるような会社の未来を語っているか?
② 若者が自分の成長を感じられるようなキャリアパスを示せているか?
③ 若者が社会における会社の意義、そこで働く自分の役割と意義を見出しやすい状況をつくっているか?
④ 共に語り合い、共に働く喜びを共有できる上司や仲間がそこにいるか?
どれかひとつだけでも、ありきたりな言葉を並べただけでも足りません。言動の一致もなされている必要があります。
若者が最終的に求めているものはそこで働く多くの人が求めているものです。
若者が見捨てる会社は他の社員にもある意味見捨てられる会社です。今、会社にいる社員は、体は会社を離れていなくても(離職していなくても)、心はとうに会社から離れているかもしれません。そんな状況下ではイノベーションは生まれません。良質な製品・サービスの維持も覚束ないでしょう。
人の可能性を引き出す工夫が人の定着に繋がります。
見えないチカラを見えるカタチにするストーリーとコンセプトの明示、それらが伝わる仕組みが必要です。
宜しければ以下もご参照ください。