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起業とレジリエンス

 

T&Iアソシエイツ代表の田中薫です。

 

ヒト・モノ・カネ・情報の入手が容易になり、入口から出口まで含め、近年、起業家やベンチャー企業※を巡る環境はすこぶる良好です。

 

(※ここでは、ベンチャー≒最近で言うスタートアップ、起業家≒高成長を目指して駆け抜けるベンチャー経営者として使っています)

 

一方で、仮想通貨を大量流出させたコインチェック、多額資金の不正流用を指摘されたmaneoなどベンチャー企業の不祥事も出てきています。

 

ベンチャー企業の不祥事はFintechに限った話でもなければ、今に始まった話でも、日本に限った話でもありません。何事も一喜一憂は不要かと思います。

 

ベンチャーキャピタル在籍時代は、実に多様な業界・業種・業態・ビジネスモデルの企業に触れる機会があり、いろんな企業の栄枯盛衰を見てきました。

 

波に乗り、事業を拡大させてIPO(株式上場)する企業。IPO後も成長する企業、IPO後にじり貧になってしまう企業。IPOに至らず、M&Aされる企業。IPOM&Aもなく、いわゆる中小企業として存続する企業。倒産する企業。

 

起業家も実にいろんな方がいらっしゃいました。

 

金融環境が厳しい情勢下、あちこち奔走してなんとか資金の目途をつけ、想いを実現すべくひたすら邁進する方。好況時に資金調達を軽々こなし、必要以上に集まった資金の使い道を間違えて経営不振に陥ってしまう方。

 

ベンチャー企業は良い時悪い時の波が激しく、起業家はチヤホヤされたり、バッシングされたり干されたり。

 

外部環境も内部環境も目まぐるしく変わるなかでのベンチャー企業の経営は、まさにジェットコースターを運転しているようにも見えます。

 

進まない開発、増えない顧客、伸びない売上、減りゆく資金・・・。

開発や営業がうまくいき始めたら、それはそれでまた次々とトラブルが出てくる、まさにモグラ叩きゲームのような日々。

 

裏切り、内紛、詐欺、反社会的勢力との関係・・・。

心身を病む人あり、開き直る人あり、出奔する人あり・・・。

 

先日、昔お会いした起業家の方をたまたまネットで見つけました。

 

今ほど起業環境が楽ではなかったときに若くして起業。波瀾万丈な人生を送り、今は当時とは別の企業を経営しながら、若者のメンター的な役割も担っていらっしゃるとか。

 

20代で起業した頃は、モテたい、金持ちになりたい、とか自分の欲が先に立っていたけれど、今は純粋に人が大事、三方良しが大切と思っていらっしゃるそう。

 

何度目の起業ブーム?のような昨今でも、若者に起業を煽るようなことはせず、起業の大変さを伝えたうえでそれでもやりたいのなら・・・といったスタンスで若者を応援しているのだとか。

 

上場・非上場問わず沢山の企業や起業家・経営者の方とお会いしてきて、個人的に感じていることがあります。

 

企業はあっけなく倒産もするし、びっくりするほどしぶとく生き残ることもある。当たり前ながら企業を経営するのは人であり、特に起業はその人の人間性が強く現れる、非常に全人格的なもの。自ずと起業家が起こした企業にはその人格が滲み出る。企業の成長も人の成長如何に左右される。

 

前述の通り、起業後の人生には相当の波があり、相応のレジリエンス(困難な状況を乗り越える力)が求められると思います。

 

乗り越えるために事実と感情を切り離す、自分を見失わないなど起業家自身の努力も必要ですが、それだけ難しいことに挑戦する人にはやはり応援が必要だと思うのです。

   

今も昔も起業家・経営者は孤独でいろんな苦悩・葛藤を抱えていらっしゃいます。家族や友人、仕事関係者などいろんな人の応援を得て、困難を乗り越えていらっしゃいます。

  

これからの時代、多くの人にベンチャースピリッツが求められると思います。いつでも、いつまでも、いろんな人が挑戦と応援を繰り返せる社会であって欲しいと願っています。

 

そして、好環境に慣れ、アクセル全開で進んできたベンチャー企業の方々には、そろそろ次の局面へのご準備が求められているように思います。ジェットコースターもレールや車両、安全ベルトのチェックは常に必要ですよね。